グリースの基礎についての勉強

2022/03/13

バイク 雑記

 バイクの整備書を見ていると場所によってグリースを使い分けていました。
グリースによってどのような違いがあるか分からなかったため、調べてまとめてみました。
間違ってる情報/他に勉強になる参考記事などあれば教えていただけるとありがたいです。


グリースの定義

JIS K220:2013によるとグリースは下記のように定義されています。
原料基油中に増ちょう剤を分散して半固体又は固体状にしたもの。特殊な性質を与える他の成分が含まれる場合もある。
(JIS K2220:2013より引用)

別のサイトから引用しますが、下記図がグリースの構成成分の概要です。
(JIS規格の定義に掛かれている特殊な性質を与える他の成分というものが添加剤の事だと思います。)
グリースの構成成分[1]


グリスによってそれぞれの要素の割合が異なると思いますが、一例として次のような割合で構成されております。

グリースを構成する3つの要素の割合例[2]

私はこの分野に疎いため用語から調査していきます。

基油について

基油とは名前の通りグリースのベースとなる油の事です。
先ほど紹介したJIS規格では「原料基油」という名前で以下のように定義してます。
グリースの原料となる潤滑油。原料基油には,大別すると精製鉱油,合成潤滑油及びそれらの混合油がある。
(JIS K2220:2013より引用)

別のサイトからの引用になりますが、基油による特性として下記表のような違いがあります。
基油による特性の違い[3]
 鉱 油合成油
合成炭化水素油エステル系合成油ポリグリコール系合成油シリコーン系合成油フッ素系合成油
耐熱性
低温性×
潤滑性×
対ゴム性×
対樹脂性××
グリースの中の基油の割合は多く、一般的には鉱油が用いられて高温性能/長寿命など鉱油で対応できない性能を求める場合に合成油が使用されます。
(調べても分からなかったですが、おそらく値段が安いから鉱油が多く用いられていると推定しています。)

添加剤について

添加材グリスの性能を向上させるために添加されるものとなります。
グリースに増ちょう剤や添加剤は何故必要かによると添加剤として一般的に以下のものがあります。(内容はリンク先のものをそのまま引用しています。)

酸化防止剤

酸化防止剤はグリースの酸化反応を停止または遅らせるための添加剤です。貯蔵安定性や機能寿命性能が大きく改善されます。フェノール類,芳香族アミン類,りん酸エステル類等があり,2種類以上を組み合わせて使用されることもあります。

防錆剤

防錆剤は金属表面のさびの発生を防止する添加剤です。海辺や屋外で使用される機械類には防錆性は重要な性質です。潤滑面でのさびの発生は著しく摩耗を増大させ,それが機械の故障につながることもあるので十分考慮しなければなりません。防錆剤は,金属スルホネート類やアミン類等,種類が多く通常は数種類を組みあわせて使用します。

腐食防止剤

腐食防止剤はグリース中の酸性物質や二酸化硫黄等の大気中の腐食性ガスによる金属表面の腐食を防止する添加剤です。ベンゾトリアゾール等の含窒素化合物があります。

耐荷重添加剤

耐荷重添加剤は大別して油性向上剤,摩耗防止剤,極圧剤の3種類に分類されていますが,これらの分類は必ずしも厳密なものではなく,1つの耐荷重添加剤で2つまたは3つの性能をもつものもあります。

1. 油性向上剤
 油性向上剤は金属表面に吸着して低荷重下での摩耗や摩擦を減少させるための添加剤です。高級脂肪酸や高級アルコール,アミン,エステル等があります。

2. 摩耗防止剤
 摩耗防止剤は低荷重から中荷重での摩耗を防止する添加剤です。りん酸エステルやチオリン酸塩等があります。

3. 極圧剤
 極圧剤は高荷重での焼き付きを防止する添加剤です。硫化油脂や塩素化パラフィン等があり,金属表面と反応して焼き付きを防止します。

⑤その他の添加剤と固体潤滑剤

その他のグリースに使用される添加剤は,流動点降下剤,粘度指数向上剤,粘着剤,構造安定剤,清浄分散剤,特殊なものとして,消泡剤,防腐剤,帯電防止剤,着色剤,乳化剤,抗乳化剤等があります。また二硫化モリブデンやポリテトラフロロエチレンのような固体潤滑剤は,おもに摩耗や摩擦を防止するために添加されます。


添加剤はこれらのものを組み合わせることで、グリスに様々な性能を与えます。

増ちょう剤について

例のごとくJIS規格から用語の定義を持ってきます。
原料基油中にコロイド状に分散して原料基油を半固体又は固体状にする物質,大別すると金属石けん型と非石けん型とがある。前者の代表的なものは,リチウム,カルシウム,ナトリウムなどの金属石けんで,後者の代表的なものは,ベントナイト,シリカゲルなどの無機化合物及び尿素誘導体,フタロシアニンなどの有機化合物がある。グリースの性能は,用いる増ちょう剤の種類によって大きく支配される。 
(JIS K2220:2013より引用)

補足になりますが、この増ちょう剤を加えないと潤滑油となります。

潤滑油に増ちょう剤を加えるとグリースとなる。[5]



増ちょう剤の種類と性能については別サイトに記載されていたので、そちらを参照お願いします。

【代表的な増ちょう剤の特性】[6]◎優れている ○普通 △あまり優れていない

種別増ちょう剤名耐熱限界(滴点)耐熱性耐水性せん断安定性
金属石けん基カルシウム石けん約90℃
リチウム石けん約200℃
リチウムコンプレックス石けん約300℃
カルシウムコンプレックス石けん約250℃
アルミニウムコンプレックス石けん約260℃
非石けん基ウレア200~300℃
PTFEなし
ベントンなし
特殊無機物なし

ちょう度について

グリスの硬さを表す指数としてちょう度というものがあります。
規格によって表現が異なるみたいですが、下記のようにASTMちょう度(場合によっては混和ちょう度とも言ったりするみたいです。)が小さいほどグリースが硬くなり、ちょう度番号(JIS分類/NLGIグレード)は大きくなります。

ASTM(JIS)ちょう度の分類[7]
硬さJIS分類ASTM(JIS)ちょう度NLGI グレード
000号445~475No.000
00400~43000
0355~3850
1310~3401
2265~2952
3220~2503
4175~2054
5130~1605
685~1156

それぞれのちょう度番号に対する状態は下記表が分かりやすかったです。

ちょう度番号と状態の対応表[3]
ちょう度番号000号(No.000)00号(No.00)0号(No.0)1号(No.1)2号(No.2)3号(No.3)4号(No.4)5号(No.5)6号(No.6)
混和ちょう度範囲445~475400~430355~385310~340265~295220~250175~205130~16085~115
状態半流動状軟らかいやや軟らかい普通やや硬い硬いとても硬い

グリスの使い分け

長々と書いてしまいましたが、結論としてどのような場面でどのグリスを使えばいいかを知りたい人が大半だと思います。

ここでは使用用途別のグリスの使い分けについてまとめていきます。
([8][9]のサイトを参考にしてます。また、あくまで一般論の話のため、状況によって異なる場合があります。)

金属-金属

基油に鉱物系のものを使用したグリースを使用します。
車両の下回りなどの水が掛かる可能性がある場所にはシャーシグリスを使用します。
(シャーシグリスは耐水性に優れますが耐熱性が劣ってしまうみたいです。)

金属-ゴム

基油に対ゴム性に優れた植物油、ポリグリコール系のリチウムラバーグリスを使用します。
(ポリグリコール系は調べた表の中にあったのですが、植物油系がどれに該当するか不明だったため別途調査します。。。)

樹脂-樹脂

基油にシリコーンを使用したリチウム系のグリース

荷重がかかるような場所で使用する場合

強い荷重が掛かったり摩擦や摩耗が起きやすい場所にはモリブデン入りのリチウムグリスを使用します。


(補足)自分が持ってるリチウムグリスとシリコングリスについて

今私が持ってるグリスはリチウムグリスとシリコングリスで、万能リチウムグリスは基油に鉱物油、増ちょう剤にリチウム石けん基を使用し、シリコングリスは基油にシリコーン系合成油、増ちょう剤にリチウム石けん基を使用しています。

↓シリコングリス



両方とも増ちょう剤にリチウム石けん基を使用してますが、使用温度が異なってます。(恐らく調合の割合が異なっているためだと思いますが。。。)

また、基油の違いによりゴムや樹脂に対する攻撃性が異なっていることが分かります。
皆さんもグリスを購入する際は基油が何か、増ちょう剤は何を使っているかを見ながら自分の使用方法とあってるか確認してみてください。

まとめ

今回グリスについて調べてまとめました。使用する基油と増ちょう剤によってグリスの特性が変わるという事が分かりました。今後整備する際に自分の使用用途に合ったグリスを選べるようになった。。。と思います。

参考文献



その他参考にしたサイト

自己紹介

はじめまして 社会人になってからバイクやプログラミングなどを始めました。 プログラミングや整備の記事を書いていますが、独学なので間違った情報が多いかもしれません。 間違っている情報や改善点がありましたらコメントしていただけると幸いです。

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